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  • 執筆者の写真sato

01-01 神戸の市内縦貫鉄道問題【歴史と高架橋の種類】

更新日:2020年10月11日

歴史と特徴

 大阪~神戸間は日本で二番目に開業した鉄道路線です。当時はさして問題にならなかったはずの線路が、市街地の急激な発展に伴って次第に障害になっていったのです。

 一番の問題は何といっても「平面交差」で、踏切は市街地の数か所に及び交通の妨げになりつつあったのです。それを解消すべく、大正のはじめ頃にJRのずっと前身にあたる鉄道院は神戸市内の立体交差を決定します。ところが、それが新たな問題の引き金になったのです。


 神戸市は“街の美観”を理由に、鉄道線路をすべて地下化した上で市の中心部を迂回させるという計画を提案するのです。しかし鉄道院は半ば一方的に線路の高架化を決定してしまいます。おかげで神戸市と市民から反対運動が巻き起こり、工事も遅延する事態に陥ってしまいます。結局、なんとか高架線の工事にこぎつけ、JR線の山側2線は「第一期工事」として1931(昭和6)年、海側2線は「第二期工事」として1937(昭和12)年に完成しました。


 また、三宮まで乗り入れる阪神と阪急にも神戸市は地下化を要求しました。このうち、阪神電車は阪神国道の工事と絡めて道路の下に地下線を建設し、最終的には三宮を経て元町まで地下で乗り入れることになりました。一方、阪急電車は高架線の建設を提案するのですが、鉄道省との交渉に失敗した神戸市はここぞとばかりに阪急に徹底抗戦を挑みます。阪急も独自のルートを諦めて鉄道省の高架線に沿わせる形で譲歩しますが、反対運動は収まることなく熾烈さを増します。最終的にはちょっとした隙をついた阪急が着工の免許をもぎ取り、1936(昭和11)年に高架線が完成します。

 こうして完成した神戸市内の高架線ですが、これらの経緯や建設時期などによって同じ区間でも高架橋の種類が異なるという特徴があります。



神戸で見られる鉄道高架橋の種類

 鉄道高架線には大きく分けて「盛土」と「高架橋」の2種類があります。ここでは高架橋のうち、「コンクリートラーメン高架橋」を簡単に説明します。

 コンクリートラーメン高架橋は橋脚と床版(スラブ)で構成されています。図の高架橋は橋脚の間に4つの空間があるので「4径間コンクリートラーメン高架橋」ということになります。実際の高架橋は3~8径間と言われています。これは地盤の良し悪しなどによって変わります。

 さらに、図の高架橋はタテ方向に2本の橋脚で構成されてます。これを「2柱式」と言います。高架橋は複線で建設されることが多いのですが、地盤が良くなかったり荷重が大きくのしかかかる場合などには間に1本加えて「3柱式」となることがあります。

 また、橋脚よりもスラブの幅が広い時に橋脚から外にはみ出している梁を見ることがあります。この部分を「カンチレバー」、日本語では「片持ち梁」と言います。

 このコンクリート高架橋を複数個つなげて連続した高架橋が完成します。この時、つなげる部分には伸縮機能を持たせるために、「エキスパンションスパン」と呼ばれる桁を挿入したり継ぎ目を入れます。このエキスパンションスパンをどう挿入するかによって高架橋の種類が分かれます。



 さて、神戸の三宮付近では5種類の高架線を見ることができます。

 この図はあくまで概念図です。阪急線が神戸高速鉄道に乗り入れていなかったり、逆に今は廃止となっている神戸臨港線を描いてたりしてますが、今回の話に必要なところだけを図にしています。 


 

①単桁式ビームスラブ高架橋

 JR線の第一期線と阪急神戸線の一部に使われています。 横梁と縦梁とで単桁を支え 、 コンクリート高架橋の橋脚間のスパンを一定に保てるという特徴があります。下の写真の336がエキスパンションスパンです。


 

② 背割式ビームスラブ高架橋

 JR線の第二期線のほとんどで使われています。 柱同士を背中合わせにして桁を挟まず径間割も均等にできるという特徴があります 。ただし、軟弱な地盤には適しません。


  写真のグレーの部分が繋ぎ目です。柱同士を背中合わせにしている分、繋ぎ目の部分は他よりも太くなってしまう傾向にありますが、柱の位置は隣り合う第一期線の橋脚のスパンに合わせられています。

 

③フラットスラブ式高架橋

  JR線の第二期線の一部で見られる高架橋で、梁を無くして柱に直接スラブを載せているのが特徴です。下の空間を大きく採れることからたいていは高架駅の構内で使われ、あまり高架線で見ることはありません。


 

④ 張出し式(突合せ式)ビームスラブ高架橋

  阪急神戸線の一部で使われている高架橋です。エキスパンションスパンを用いずにラーメン高架橋同士を繋げているので繋ぎ目部分が少なくて済みますが、一方で接続部分が小径間になってしまうため径間割が不揃いになってしまう欠点があります。


 

⑤盛土(擁壁)

 JR線の東西の終端部分は盛土となっていますが、コンクリートの擁壁で固められています。


 




高架橋のデザイン


 第一期線の欄干の柱にはダイヤのマークがデザインされています。これは高架化に反対した神戸市に対して“街の美観”を損なわない配慮だと思われます。

 一方、第二期線の柱にはカンチレバーは無く、また欄干のデザインも省略されています。第一期工事と第二期工事には6年間のズレがあり、その間に技術の向上や高架線に対する認識の変化があったと思われます。ただし、第一期と第二期の

高架線は種類こそ違えど径間割が揃えられており、街の美観に重ねて配慮された形跡も窺えます。

 さて、阪急神戸線の高架線は、反対運動の理由の一つが景観の問題でだったので高架線をすでに建設されてた第一期線に沿わせることで問題を回避しようと試みます。そのため、神戸三宮駅からJRの線路との分岐点までの高架線では、隣接する神戸市街高架線の径間割に合わせて「単桁式ビームスラブ高架橋」が採用されています。ところが、JRの線路との分岐点から線路が分かれると、JR線の径間割に合わせる必要が無くなるので「張出し式(突合せ式)ビームスラブ高架橋」が採用されます。それでも欄干などに共通のデザインを採用しているなど、外観に注意を払った様子が窺えます。


 架道橋にもその傾向が表れていて、神戸三宮駅近くの架道橋にはJR線と同じ3径間の鋼製ゲルバー架道橋が採用されていますが、このタイプの架道橋は神戸線の他区間はおろか、阪急の他路線では採用されていません。また、他の架道橋でも、JR線は鋼製桁で阪急はコンクリート桁と素材の違いはあっても、同じ径間に揃えられています。



 しかし、JRの線路と分岐してからは大胆にコンクリートアーチ橋が採用されているなど、むしろ違いが際立っています。このコンクリートアーチの架道橋で石積みアーチのような模様があるのはもちろん外観に配慮した結果であるものの、設計した阿部美紀志のこだわりであったとも伝えられています。

 架道橋に大径間のコンクリートアーチを採用した鉄道高架線は他にほとんどなく阪急神戸線の高架線の特徴とも言えますが、これは仕様書を策定するほどのコンクリートの専門家であった阿部が、同時にアーチ構造を好んで用いたのが影響していると思われます。阪急三宮駅や阪急梅田駅、梅田阪急百貨店などの建築物や、阪急梅田駅付近にかつてあったアーチ式高架橋など、彼が手掛けた構造物にはアーチを見ることができます。



〈参考文献〉

小野田 滋,『鉄道構造物探見 トンネル、橋梁の見方・調べ方』(JTBキャンブック,2002年)

小野田 滋,阿部美樹志とわが国における黎明期の鉄道高架橋, 土木史研究 第21号,2001年5月

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